村のはずれに川があって、そこをずっとのぼっていくと、一けんのいえがありました。そこにはおじいさんとおばあさんがくらしていました。
おじいさんはかりゅうどで、うさぎやしかをしとめ、その皮をうってお金を手にしていました。おじいさんがりょうへ出かけているあいだ、おばあさんは川へせんたくへ行きました。ところが、大きなももがながれてきても、目がわるいせいで気がつかず、村のおばあさんがそれをひろってたべてしまったそう。とってもおいしかったんですって。
あるとき、りょうのさい中に、おじいさんは、おやこのたぬきを見つけました。お母さんだぬきがいのちごいをします。
「どうかおたすけください。わたしはどうなってもいい。この子だけはおたすけを…」
「そうじゃな。」
ぶすり。おかあさんだぬきはしにました。こどもたぬきは、にくらしそうにおじいさんをにらみました。
「こりゃあたかくうれるぞい!」
おじいさんは気がつきませんでした。
つぎの日のことです。おじいさんとおばあさんが、さけフレークでごはんをたべていると、いえの戸をたたく音がします。とんとん、とんとん。小石でもぶつけるような、小さな音です。それでもおじいさんはげんかんまで行き、戸をあけました。すると、足もとに、きのうのこどもたぬきがいます。
「やい、くそじじい! おれはかんかんだ。おまえのだいじな、だいじなものをうばってやる!」
「なんじゃと?」
こどもたぬきは、まえ足をおじいさんにむけ、さけびました。
「かーーーーーーーーーっ!!!!!!」
「ぎゃーーーーーーーーっ!!!!!!」
おじいさんは、しろくろになってさけび、気をうしなってしまいまし 。
目がさめると、いえのなかです。おじいさんはむくりとおき上がり、あ りをみまわしまし 。ところが、こども ぬきのすが はありません。おばあさんは、しんぱいそうにおじいさんを見つめています。
「へいきですか? とつぜんたおれてしまって…」
「しんぱいはいらない。さあ、さけフレークをくおう。」
おじいさんはあけっぱなしの戸をしめ、しょくじにもどりまし 。
しかし、おじいさんはなん ゛かへんな気ぶんです。書いているわ しもへんな気ぶんです。それに、おじいさんのほうは、どうやら気をうしなっ ときに、あ まをぶつけ み いです。
「い …」
「おじいさん、なにか?」
「ああ。このあ まが…」
「あ、あまですって!?」
「いや、ちがうよ。あ まにま 、 んこぶができてしまっ んだよ…」
「あ、あまにまん…。なんてげひんなんです! おじいさんがそんなにいやらしい人だとはおもいませんでした!」
「 ま ま ゛! ま ま ゛!」
「その上、ようじたいこうですか! もうあいそつきました。今日かぎりでわかれましょう。今までおせわになりました。さようなら!」
おばあさんは、にもつをまとめて出ていってしまいまし 。
「ば、ばあさんや…、どうして…」
くっくっく。わらいごえがきこえます。おじいさんがふりかえると、そこには、こども ぬきがいるではないですか。
「お、おまえのしわざか!」
「おじいさん。もうぼくの気はすみました。た、をお返しします。あと、書いているあなたにも。」
た、た、た、た、た。ああ、た、がつかえる! よかった!
「ば、ばあさぁん…。た、た、た、た、たー! テャー! テュヤー!」
おじいさん、こしょう。それを見、けけけとわらうと、ぼん、とけむりをのこし、こどもたぬきはあとかたもなくきえてしまいましたとさ。おしまい。
Comments by 上埜 ヒデユキ